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マダラ蝶
久し振りにインスパイアです。
一応連載の方もちょこちょこ書いてるんですが、なかなかうpできず申し訳無い。

最近小説をあまり書いてなかったのでリハビリ的な意味と、勢いです←

毎度ですが、イメージが違ったら申し訳無いです。

今回は【マダラ蝶】と言う曲を題材にしました。

GO-ONGO-ON
(2009/08/05)
UVERworld

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 例えば、もし今から一時間後にこの世界が終わってしまったなら、それまでのことはすべて永遠になる。有限のものが、無限になる。
 ほら、『永遠』なんて言葉はこんなにも曖昧で不確か。
 まるで私と彼のように……。


 鳴り響く目覚まし時計を止めて、二度寝したい衝動を抑えつつ体を起こす。
 いつもと同じ時間に起きて、朝食を食べ、着替え、準備して、家を出る。電車に揺られて会社に行き、仕事をこなして同じように帰ってくる。
 彼と選んだお気に入りの照明をこの手で消して、眠りに就く。

 毎日同じことの繰り返し。
 時々分からなくなる。何のために仕事をしているのか。何のために生きているのか。
 仕事は楽しいし、やりがいもある。だけど何か大切な物が欠落しているような気がしてならない。

 以前はそんな風に思ったことはなかった。それは本当に心から愛した人が傍にいたから。
 だけど今はもう居ない。


 彼とは職場恋愛だった。少し先輩の彼が新人で入った加奈の教育係だった。
 お互い、惹かれるのに時間はかからなかった。しかし社会人として、恋人であることは周囲に隠していた。仕事に支障をきたさないためだ。それが良かったのか、悪かったのか、未だに分からない。

 別れを切り出したのは、彼の方からだった。
「ごめん。俺……他に好きな人ができたんだ」
 その言葉に衝撃を隠せなかった。
「え? 何……言ってるの?」
 あまりに唐突すぎて聞き返した。
「加奈のことは好きだよ。だけど……それ以上に好きな人ができてしまったんだ」
 彼が何を言っているのか、理解できない。
「だから、ごめん。……別れよう」
「……分かったわ」
 自分でもなぜそう答えたのか分からない。ただ、もうお互い子供じゃないし、泣いてすがるようなそんなみっともない真似もしたくはなかった。
「だけど、仕事は辞めないわよ。だから、仕事ではいつもと同じ。ただの同僚に戻っただけ」
 加奈がそう言うと、彼は頷いた。
「もちろんだ。本当にすまない」
 彼はもう一度頭を下げた。その時の自分は、今思い出しても驚くほど冷静だったと思う。

 あの時どう言えば良かったんだろう? 泣いてすがれば、彼は考え直してくれただろうか?
「……馬鹿みたい」
 吐き捨てるように呟く。どうしたって彼との関係は戻らない。
 どんなに願っていたって、叶わないことだってある。子供じゃないんだから、それぐらい分かってる。
 だけどずっと『あの時、何であんなことを言ったんだろう』と、後悔して泣いてばかりの日だった。


 時折、仕事でふと見せられる優しさに気持ちが揺らぐ。
 だけど隣に居るのは、自分じゃない女で、確かにあったはずの居場所はもうない。
「中村さん? どうしたの? 気分でも悪い?」
 声をかけてきたのは、彼だった。
「いえ。何でもありません。すみません」
 他人行儀に返す。
「そう? 顔色悪いみたいだけど」
 気持ちなんてもうとっくにないくせに、どうして優しくなんてするの? そんなことをぶつけてやりたい。だけどグッと堪える。
「……ちょっと寝不足なだけです。すみません」
 そう言ってその場を立ち去る。

 一体何をしてるのだろう?
 息苦しくなる胸を押さえ、会社の外へ出る。深呼吸をすると、少しだけ落ち着いた。
 いつまでも引きずっててはダメだ。
 そんなこと頭では分かってる。だけど気持ちはついて行かない。
 どうして彼はあんなに普通にしていられるのだろう? まるで何もなかったかのように。
 確かに愛し合った日はあったはずなのに……。
 俯いた視界の中にオレンジが飛び込んでくる。ふと視線を上げると、そこに居たのはふわふわと飛ぶマダラ蝶だった。
「もう……そんな季節」
 別れを切り出されたのは、冬が本格的に始まろうとする時期だった。それからもう三ヶ月以上経ってるなんて……。
 昔、本で読んだことがある。マダラ蝶の種類の中には直線距離で千五百㎞以上もの距離を飛んで行ったりするらしい。
 例えばあの蝶のように、海を渡って遠くまで行けたなら、何か変われるのかな?
 あの青い空を高く飛んでいけば、違う自分になれるのかな?
『本当に加奈のこと、好きだったよ』
 ふと彼の言葉が蘇る。
 やめて。もうそんな言葉で心を占領するのはやめて。
 思わず耳を塞いで、ぎゅっと目を瞑る。
 騒がしいこの街も、明るい世界も、すべてなくなってしまえばいい。
 この世界が終わってしまえば……永遠になるのに……。
「……先輩? 大丈夫ですか?」
 ふと近くで声がして、加奈は顔を上げた。
「多田くん……」
 目の前にいたのは、加奈の後輩だった。今、加奈は彼の教育係をしている。
「何か具合悪そうだったんで……大丈夫ですか?」
 ふと彼の優しさにすがりたくなった。いや、誰でもいい。思い切り泣いて、甘えたかった。
 だけどそんなことできるはずもない。加奈はその衝動を胸の奥にぎゅっとしまって蓋をした。
「大丈夫。ごめんね。心配かけて」
「それならいいですけど。仕事しすぎじゃないですか? ちゃんと寝てます?」
 まるで彼氏のような口ぶりに加奈は思わず笑った。
「大丈夫よ。そんなお母さんみたいなこと言わないでよ」
「すみません」
 加奈が笑ったので、彼も苦笑する。
「戻りましょ。あんたには教えること、たくさんあるんだから」
「はい」
 二人はそう言って、再びオフィスへと戻った。

 時間はかかるかもしれない。
 だけどいつか、振ったことを後悔するようないい女になってやる。
 あいつよりも素敵な人を見つけて、幸せになってやる。

 きっと、いつか。
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テーマ : ショート・ストーリー
ジャンル : 小説・文学

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